ロリータコンプレックスの末路

「だって可愛いじゃない、あの子達」
 日曜日の午後。夕飯の買出しがてら二人で散歩。住宅街の中の広めの公園。暮れかけた夕日、さよならの声。
 遊び足りない子供たちが駄々をこねる。帰りますよと手を引く母親。
 街路樹は紅葉、伸びる影は長く、夕焼けに染まる子供たちの頬。
「そんなに可愛い?」
「何、やきもち」
 こちらを向いて、にへら、笑う彼女の顔も赤い。 
「違う」
 反論した自分の頬が朱に染まっているのは明確で、けれど夕焼けの赤に隠れればいいと思う。
 子供たちが一人ずつ、一人ずつ居なくなる。ばいばい、さよなら、また明日。
「君のこともちゃんと可愛いと思ってるし大好きだし愛してるけど」
 彼女は子供達を眺めている。自分は赤く染まった彼女の横顔を眺めている。
「子供たちって見てると養育費出して囲いたくならない?」
 殴ってみた。
 するとそれを見て寄ってきた少女に「けんかだめっ」と怒られた。
「怒ってるのも可愛いなぁ」
 私の思いを受け入れて、子供を産む能力を放棄した彼女の、これは見せしめなのか、嫌がらせなのか。
「産みたいなら、別れても良いよ、私は」
 震える声で告げてみる、心とは裏腹なセリフ。それを風に流すようにして、暮れかけた夕日に彼女は歩き出す。
「今は君だけでいいや、ね」
 なんて泣きそうな夕暮れの色!